縁あって銀座の老舗クラブAの黒服をしていた時の話

519: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 18:55:05 ID:XDv3htfH0
ボコボコで記憶の蓋が開いたので他人の修羅場を傍観の立場から。 

・種馬男…クラブAのボーイ。古いタイプのイケメン。若作りした三十路。 
・泰子…クラブAホステス。種馬男と同棲中。某松雪似の美人。三十路。 
・間子…クラブAホステス。19歳のギャル。 
・友子…クラブAバーテンダー。昼はアパレル勤務。アラサー。 
・私…クラブA黒服。ボーイならぬガール?大学二年生(当時) 

大学二年生の頃、父が事故で大怪我を負った。 
幸い命は取り留めたが、リハビリの時間を含めると少なくとも一年は働けないことが確定。 
そして我が家は零細自営業。一年も休業したら復帰後の収入減も確実だろう。 

私は私立に通わせて貰っていた為、学費は年間90万もかかる。 
バイトを増やさなきゃなといろいろ探していたところ、 
縁あって銀座の老舗クラブAの黒服として雇ってもらえることになった。 

私の仕事は夕方の7時から深夜の12時まで、黒服という名のウェイトレス。 
営業時間は8時からだが、ホステスさん以外は店の開店準備に早く来て、掃除や買い出し、テーブルセットをするのだ。 

開店準備の時間中は、私と種馬男と友子さんの三人で雑談をしながらの作業になる。 
最初は年上の二人に気後れしていたが、二人はさすが客商売だけあって話上手でフレンドリー。 
間もなく打ち解けることが出来、連絡先を交換しあったりもした。


520: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 18:57:34 ID:XDv3htfH0
高級シャンパンやワインを開ける手つきもこなれてきた頃、新人ホステス・間子が入店してきた。
間子はいまどきのギャル・アゲ嬢といった感じの派手な子で、 
銀座のホステスというより歌舞伎町のキャバクラ嬢タイプ。 

がしかし、店のカラーに合わなかったとの理由で、間子はすぐに店を辞めていった。 
クラブAは小さい店なので売り上げにはとてもシビアで、人の入れ代わりが激しく、 
私のなかでは間子もまたその内の一人だったので、ほどなく私は間子を忘れていった。 

三ヶ月ほど経って街はクリスマスムード。 
それまでは業務要件一辺倒だったのに、頻繁に個人的なメールが種馬男からくるようになった。 

種馬男は三十路ながらも二十代前半にも見えるハンサム。 
慣れない仕事のフォローもよくして貰っていたので迷惑ではなかったが、 
やはり夜の世界の人なので、私はあまり信用はしていなかった。 

種馬男に「仕事終わった後飲みに行こう。」と誘われてしまい困惑した私は友子さんに相談することに。 
すると友子さんは苦虫を噛み潰したような顔をして言った。 
「(私)ちゃんは素直で騙されやすそうだから心配だったんだよね。」 

「種馬男は泰子さんと同棲してるんだよ。 
お互い隠してるけど、私は泰子さんから聞いて知ってるんだ。 
種馬男は、私が同棲のことを知ってるって知らないと思う。」


521: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 18:59:33 ID:XDv3htfH0
話のついでとばかり、友子さんからオーナーや店長にも気を付けるようにも言われた。 
聞けば、オーナー(妻帯者)も店長(妻帯者)も種馬男も、店の子に手を付けるのが日常茶飯事らしい。 
今思えばそれが所謂「色恋管理」ってやつなのかな。 

「○子さんは今オーナーが手を付けてるんだよ。全然店に来なくなったでしょ?」 

スケベそうな顔した店長はともかく、 
オーナーは若い頃はさぞと思わせる容貌で、痩身に趣味のいいスーツ着こなした白髪混じりのロマンスグレー。 
THE・紳士…だと思ってたのに… 

やはりここはお水の世界なのだ! 
私は一気に怖くなってgkbrした。 

種馬男からの誘いは実家暮らしを理由にお断りをした。 
(仕事終わりに飲みに行くと確実に終電がなくなるので親が心配する。) 

年末の忘年会では破壊的にダサすぎる種馬男の私服を初めて目撃して噴いたり、 
(仕事中はいつも黒服姿だったので制服マジックがかかっていたようだ…。) 
泥酔した種馬男が「俺は風呂屋に行くことを許してくれる女としか付き合わない!」などと口走ってるのを聞いたりして、 
(その席に泰子さんはいなかった) 
「こいつ、単なる汚いおっさんだな」と悟り、 
改めて「種馬男からの誘いを断ってよかったー!!」と心底思った。 
友子さんに激しく感謝しつつ胸を撫で下ろして、激動の一年が終わった。


522: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 19:02:16 ID:XDv3htfH0
年開け最初の営業日前日、店長から電話でこう頼まれた。 
「明日は馬男が来られないから、替わりに開店準備をやってほしい。15時に来れないか?」 
大学はまだまだ冬季休業中なので、私は二つ返事で引き受けた。 

テーブルで帳簿付けをしている店長に指示されながら、 
乾いた布巾で店中のグラスを磨いたり、酒屋から届いた酒を運び込んだり。 
普段は種馬男が一人でやっているらしい作業をこなした。 

やがて友子さんもいつもより少し早い時間に出勤してきてそれに加わり、 
一段落着いた頃、店長が友子さんと私を呼んでこう言った。 

「種馬男はしばらく休むから、それまでお前達に種馬男の分も頑張ってもらいたい。」 

私が「何かあったんですか?」と尋ねると、店長は「病気で少しの間入院するだけだよ。」との返答。 
私は学校が始まるし、友子さんは昼は別の仕事をしているが、店長と三人なんとか調整しつつやっていこうということに。 

その日の営業は年始ということもあり目が回るほど忙しく、シャンパンやワインが何本も開いた。
ホステスのお姉さん達は皆着物で艶やかだった。 

例に漏れず泰子さんも着物姿だったが、 
その右手には手全体を覆うように包帯がぐるぐると巻かれており、添え木までしてあった。 
それはそんな華やかな雰囲気の中で一層痛々しく、みんなが泰子さんを心配し労いの言葉を掛けていた。 

「種馬男も入院して心細いだろう時に、泰子さん怪我しちゃったのかー。 
悪いことって重なるよね、新年早々可哀想に…。」などと、 
私も入院中の父親と重ねて、種馬男と泰子さんの二人を思っていた。


524: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 19:05:19 ID:XDv3htfH0
仕事帰り、友子さんから全ての裏事情を聞いた。 

種馬男は間子との浮気がバレて、泰子さんにボコボコにされ、歯を何本かと鼻を折られ、 
とてもじゃないけど店に出てこられるような顔じゃないらしい、と。 
泰子さんは種馬男を殴ったその手を骨折したらしい。 

なにそれ怖い 

私は友子さんの話に耳を傾けながら、「これは別の国の物語なんじゃないかな」と半ば現実逃避をしていた。 
俗に言うバッファが溢れた状態とも言える。 
私の処理能力では追い付かない話だったのだ。 

その後様々な人達からの証言を繋ぎ合わせた詳しい事情はこうだ。 

種馬男は間子の短い在籍期間中に間子と連絡先を交換、隠れて会っていたが、 
野性の勘を働かせた泰子さんに携帯を見られ、浮気が発覚。 

泰子さんに問い詰められるも、種馬男は「食事に付き合っただけでしていない」と釈明。 
メール内容からは決定的な内容は解らなかった為、泰子さんもその場は引かざるをえなかったらしい。 

泰子さんはせめて、と種馬男にその場で間子に別れのメールを送らせたが、 
もともと種馬男的には、間子と会うのはヤリ目だったので、 
「FOするのが少し早くなっただけのことだし?、 
泰子の追及も交わせたしギリギリセーフ!」と思っていたみたい。


526: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 19:10:16 ID:XDv3htfH0
しかし一ヶ月後。 
間子から「種馬男の子を妊娠した。」と連絡が。 

焦った種馬男は「なんとかして堕胎して貰わねば!」と説得をするも、間子は「産む」の一点張り。 
もともと間子は、種馬男に同棲している恋人(それが泰子だとは知らなかったみたい)がいると承知の上で種馬男と会っていたらしく、 
種馬男も割り切った大人同士のなんちゃらだから説得も容易だと考えていたみたい。 

しかし種馬男の再三の説得にも頑として首を縦に振らない間子。 
根負けした種馬男はいったんその場を解散し続きはまた後日に、と仕事へ。 

そんな不毛な議論が何度か繰り返されたそうだ。 

仕事の疲れに加え間子の事が重くのしかかり、弱り切って種馬男は、深夜、 
束の間の安寧を貪るように自宅のベッドで泥のように眠っていた。 
その隣では再び泰子さんの野性の勘が閃いていた。 

種馬男はさすがに今度は学習したらしく、間子からのメールは完全消去済み。 
しかし何を思ったか、泰子さんは自分の携帯から間子にメールを打ち始めた。 
泰子さんは以前種馬男の携帯を見た時に間子のアドレスをコピーしていたのだ。


528: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 19:15:53 ID:XDv3htfH0
ほどなく間子から泰子さんに返信が。 
何往復か続く深夜のメールラリー。 

「ねえねえ起きて」 

明け方、泰子さんに揺り起こされる種馬男。 

「なんか妊娠したって言ってるんだけど^^^^」 

最初に浮気を問い詰めた時にはしていないと偉そうに言い張ってたのに、妊娠とな。 

泰子さんガン切れし泣きながら種馬男をフルボッコ。 

ボコボコにされた種馬男は翌日凹凸の増えた顔で再度堕胎を頼むが、間子はこれを拒否。 
その場で弁護士を同席させられ、産まれる子供の認知と、出産費用と養育費等の支払いを契約しろと迫られることに。 

涙目で帰宅する種馬男に、泰子さんは言った。 
「浮気の慰謝料として50万。 
加えて契約更新までの向こう一年間、同棲しているこの部屋の家賃(15万/月)を支払ってね^^ 
勿論あんたは今すぐ荷物まとめて出てって^^」


529: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 19:17:51 ID:XDv3htfH0
種馬男は収入のほぼ全部を泰子さんと間子への支払いに割かねばならず、 
独り暮らしをする余裕すらなくなり、千葉の実家に帰ったそうだ。 
今もそこからクラブAに通っている。 

種馬男は妊婦である間子に、 
「産まれても写真とか送ってこないでね!赤ん坊の顔なんか見たくもない!」 
と捨て台詞を吐いたとか。 

泰子さんはその後種馬男に復縁を何度も持ち掛けたけど、 
歯まで折られた馬男は「もう無理愛せない」と断ったらしいとか。 

間子ベビーは無事に産まれ、種馬男は認知をしたとか。 

二年分の学費を貯めるまでにいろいろありました。 
もう二度と夜の世界で働くまいと私に思わせるには十分な出来事でした。 
お水の花道怖い。 

糸冬


530: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 19:19:44 ID:wg4vxBuE0
乙・・・水商売の人間関係はロクなのがないな


531: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 19:27:24 ID:3NN7f7+s0
乙です 

やっぱり、一般人が関わるような世界じゃないよな……


532: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 19:30:15 ID:d9Y2g3P8P
スタープラチナが思い浮かんだ


534: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 21:08:07 ID:aX4uwT4dP
泰子が種馬に未練があるというのが分からん 
もし復縁してもまた浮気するだろうに


541: 恋人は名無しさん 投稿日:2010/03/28(日) 23:08:33 ID:7RnAJfXx0
乙。 
夜の世界はみんな容赦ないですなー((;゚Д゚)ガクガクブルブル 

でも間子ベビー、ほんとに種馬男の種だったのかなぁ