オートバイと一緒に壊れた僕は、オートバイと一緒に復活ナラシが終わった頃には復職。
数年前、オートバイが故障したタイミングで仕事の人間関係が拗れて鬱病に。
休職、投薬治療、副作用で布団からでれない日々が続きました。
フラッシュバックと副作用が地獄で、深夜に奇声を発しながら壁殴りしていました。
壁殴りする奴って本当にいるんだなぁ・・・
体に薬がなじみ、精神状態も薬のおかげで落ち着いたように見えるようになった頃。
季節感すら無なる日々だったようです。
医者と家族に約束をし「温泉の近くにテント張ってやまごもりしてくるわ」
「一週間に一度は病院に行くのに帰宅する事」
「一日一度、生存報告と現在位置を報告する事」
「薬はまじめに飲む事。薬の影響で眠くなったり心が不安定になったら寝る事」
条件付けて許可を出されると鬱病患者はその通りに動く傾向があります。
例えば「明日は病院に行かないといけないし、今日死ぬと迷惑かけちゃうな」といった具合。
そんなこんなで軽トラの荷台をバイクのリアシートに見立ててパッキング。
なにせ時間は沢山あるんで、焦る事はありませんでした。
平湯にいって山と温泉の往復、下呂のタダ湯に深夜入浴。
最初は林道の奥でテント張りっぱなしにしておくつもりでしたが
日がな一日ラジオと読書と温泉だけでは飽きてしまい・・・。
自重しようと思っていましたが結局軽トラで、普通のツーリングをしてしまっていました。
もちろん道の駅各駅停車で昼寝したり間食しながらですが。
軽トラの荷台にテントを張ると具合が良い事を発見し、結局は道の駅で車中泊?になっていきました。
そういうノリで突発宴会になる事はとても楽しいのです・・が。
その当時の僕は「帰るまで誰とも話したくない」というめんどくさい心境でしたし、
実際話しかけられても避けてきました。
車中泊の人々は他人との関わりを避ける傾向にあるので、なんとか孤独であることを貫けて気が楽でしたが・・
まぁ、軽トラにテント張っている怪しい奴が居れば、好奇心旺盛なオジサンは話しかけてくる訳で。
ある朝、とうとう軽トラの荷台に木造の立派な座敷を作った渓流釣りのオジサンに声をかけられました。
軽トラ車中泊談義が盛り上がり。
いつのまにやら昔みたいに、旅人との出会いを自然に楽しめている自分に気がついたのです。
エレベーターの密室も怖くて乗れなくなったし、人の多い本屋にすら行けなくなった僕が。
電車なんかとんでもない。コンビニ行くのも一苦労だった僕が。
旅先で知らない人と楽しく話している事に気がついたのです。
そんなこんなで病院と山の往復だったのですが
八月も終わりのある日、次の通院は2週間後となりました。
通院の間隔が開いてきたという事は、どうやら回復に向かっているようでした。
病気療養中に旅するという後ろめたさはありましたが・・・。
医者には「おまえさんは散々あそんできなさい。おみやげよろしく。」と言われたので堂々と再び旅に出る事にしました。
国道425を完走し、和歌山港から徳島。国道439を走り午後1時。
四国カルストがあんまりにも奇麗。
家族にメールで「ここをキャンプ地とする」という宣言をし。
昼間から砂利駐車場に車を止めて夕焼けを待っていました。
目の前の細い高原の道をパッキングしたバイクが走っていきました。
何台も。何台も。
一年間、故障したまま、ホコリをかぶった自分の愛車が頭をよぎりました。
四国カルストの道をバイクが一台、また一台走っていくたび
再び、オートバイへの気持ちが目を覚ましていくのが解りました。
仕事ごときで疲れて、バイクにも乗らなくなるような生き方を望んだか?
夕日が沈み、星が出て、回りには誰一人もおらず。
叫んでみた。思いっきり。
今まで我慢して、愛想笑いして、頑張ってきた。
ぶん殴りたくなる気持ちを押さえつけて、理不尽に頭を下げる事が社会人だと思ってきた。
我慢するのはもうやめよう。
フロントフォークもなにもかも外して修理を始めた。
一週間で僕のオートバイは完璧な状態に戻ってくれた。
薬が効いている自覚はないけれど、どんな影響があるのか解らないから
いつもよりゆっくり走る事、いつもより短距離で済ます事、三時間で帰宅する事を胸に刻み家を出た。
ちょうどエンジンも腰上を全部あけたので「ナラシ」という縛りがあって丁度よかったように思える。
昔は毎朝通った峠の頂上で事情を知っているバイク繋がりのツレに電話をした。
ツレとはオートバイに乗れなくなってから疎遠になっていましたが。
「オートバイに復帰したよ〜。ただいま〜」
「おうwwwおかえりwwwww長かったなwwwww」
帰り道。田んぼの真ん中のまっすぐな農道で。
気持ちのいい道です。交通量の少ない夏の田んぼ道。
声を上げて泣きながら走りました。
オートバイに乗っているのがうれしくて仕方が無かったのです。
泣いた後は大声で笑いました。
端から見ると、なんて気持ち悪かった事でしょう。
ナラシが終わった頃には復職。
仕事もなんとか人並みに回るようになり
休日は走り回り、投薬も終わり、通院も終わり。
療養中のフラッシュバックより、断薬のが辛かったのは計算外でしたが・・・。
長文御免。
オートバイっていいよね。
バイク楽しもうぜ!!
復活おめでとう!
おかえり。
ちょっとだけ寄り道しちゃったんだな。
バイク乗りに限らず旅してるヤツとか時間を贅沢に使ってるヤツは何となく近いものを感じるわ。
四国カルストってどこやねんってググッたら行ってみたく
なったじゃねーか!
丁度今年の夏に四国ツーリングを考えてたんだ。
良さげなトコ教えてくれてありがとう。
引用元: ・バイクにまつわる泣けた話【9発目】.
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません